書斎の文化史

期待して読んだけど、イマイチ期待はずれでした。海野氏の比較的初期の著書だけあって、このテーマで語るには、資料的な背景がいささか乏しいように感じます。確かに、書斎関係の資料が案外少ないという事はわかるんですが、古代の章でアウグスティヌスを例証に出していたのは、さすがに苦しい印象をぬぐえなかったです。時代を下って、Ｒ･サザーンやＭ･プラーツなどの引用も、なかなか頑張ってる気はするんですが、うーんという感じ。とにかくこのテーマで語りつくすだけのバックボーンが、この時期の著者には不足していたということです。ゆえに、論域もさして広がらない。著者はその後ますます知的フィールドを広げ、ペダンティックの度合いも進んでるようなので、もし今現在、同じテーマで書き直せば、面白いものが出来るかもしれない。