マンハッタン聖魔伝 (FUTABA NOVELS)

解説で指摘されている通り、菊地秀行は、現在に至るまで(伝奇アクションに限ってのことだが)「英雄」たちの物語を書き続けてきている。それが一番色濃く示されている作品が、これであると思う。主人公は、とびきりセクシーな肢体を持つヌードダンサー･へらと、その夫で、貧弱な体つきをしている三吉。一見して、「英雄」には見えない。しかし、そのギャップが大切。この二人、とんでもなく強いのだ。魅力的でもある。菊地作品の主人公たちは、みな印象に残る個性的な人物ばかりだ。本書の主人公の夫婦も、例外ではない。夢枕獏の影響を受けた(?)軽快な文体でストーリーはテンポよく進み、アクションとバイオレンスとセックスと英雄譚が縦横無尽に物語の中に詰め込まれており、痛快な作品になっている。バイオレンス･アクションは言うに及ばず、露骨なセックス描写がすごい。菊地秀行の奔放な想像力と、前述の要素が見事に結合した作品といえる。ラストがあっけないことが、残念ではある。