映画プロデューサー入門

「映画プロデューサー入門」と表紙をぶち抜いた真っ赤な大仰な文字が目を引いた。編著者は、「Shall we ダンス？」などの娯楽映画作品を世に送り出し続ける映画プロデューサーの桝井省志氏であるにゃん。で、映画好きの我輩はさっそく購入！ページを繰ると、どうも月並みの入門書らしからぬ様子。いきなり、「映画プロデューサーに入門書は不要だ。手にしていたら川に流せ！」ときてズッコける。机上の論を嫌う現場主義とも言えるが、どうやら、著者の真意は、「独立映画プロダクションのススメ」！！であるらしい。独立プロダクションのプロデューサー、つまり、製作現場でのあらゆる制約とリスクを我が身一身に引き受けて、自ら汗を流す労働をし、時には己を捨てて憂き身を窶す渡世人になる覚悟があるか？と、映画プロデューサーを志す者に問いかけている。が、豈図らんや、そんな説教じみた堅苦しい本ではない！！娯楽エンターテイメントを作り続けてきたプロデユーサーがプロデュースした本書、やっぱりバラエティに娯楽している。何も映画プロデユーサーを志してなどいなくても、気の向くまま楽しく読める。本書に登場する現役プロデューサー達の生の声からは、日本映画の現状へのボヤキと本音が聞こえてきて面白いし、岡田裕、伊地智啓、佐々木史朗という独立プロダクション重鎮のロング・インタビューは、三氏にしか明かせない製作の裏話満載で、まるでハードボイルドな暗黒小説さながらだ。だが、全てのプロデューサー諸氏から聞こえてくるのは、「たかが映画、でも、やっぱり映画が好きだ！」という単純明快な声だ。そして、特別読み物と称した、桝井氏とやたら映画に詳しい謎の放浪犬・映画犬との架空対談は、本書の息抜きコーナーなのだろうか、軽妙にして笑いを誘う。何となく、桝井氏の「落ちこぼれのススメ」とも読めた。小難しいことは一つも書いてないです。映画好きなら誰でも気軽に読める、我輩のオススメの映画入門書であるにゃん！！